植物生理学
    
        
            植物は水の中から陸に上がる進化を遂げてきた。
            陸上で動かない生活を送る植物は、環境に適応して様々な仕組みを発達させています。
            植物の生命現象を多方面から考えます。
            分類学、形態学、生化学、遺伝学、生態学など、さらに分子生物学、生命情報学、分子進化学など
            さらに、バイオイメージング、ゲノム編集など、植物生理学には、
            楽しむべきことが沢山あります。
            植物は、陸上植物だけではありません。先述のように水の中で生活する藻類も植物です。
        
        
        
    
    植物を構成する物質
    
        水:植物を構成する物質の中で最も多い。
        糖
        脂質
        タンパク質:20種類のアミノ酸がペプチド結合により重合して構成。
        ・二次構造-αヘリックスとβシート構造
        ・三次構造-アミノ酸+
        ・四次構造-水素結合、疎水結合、システイン残基のジスルフィド結合によって形成され、
         ポリペプチド鎖が2本以上集まって複合体として機能する立体構造。
        
        タンパク質を構成するアミノ酸は、当記事の「なぜ人は生き物を食べるのか」を参照ください。
        
        植物の中で行われる化学反応代謝について。
        アデノシン三リン酸(ATP):アデニンとリボースが結合したアデノシンに3分子のリン酸が結合した物質。
        アデノシン二リン酸(ADP):ATPが加水分解される。
        その反応によって、1分子のATPからエネルギーが放出される。
        代謝経路:負の自由エネルギー変化を伴う発エルゴン反応で一方向に進行する。
        
        異化:エネルギー状態の低い物質を代謝可能な高エネルギー物質に
        変えるためにはエネルギーを供給する必要がある。
        
        同化:異化で得られたエネルギーを用いて新たな物質を合成する代謝。
        代謝における酸化還元反応には、
        
            ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)
        や
        
            ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)
        の
        ような電子物質が関与する。
        酸化還元に関与して構造が変化するのは、ニコチンアミド環だけ。
    
    
    
    植物を構成する物質
    
        陸上植物:非維管束植物・維管束植物
        
        非維管束植物:コケ植物(苔類・蘚類・ツノゴケ類)
        維管束植物:種子植物・非種子植物(シダ類とその近縁種)
        
        種子植物:
        ・裸子植物:胚珠が覆われていない植物(ソテツ類・イチョウ類・針葉樹など)
        ・被子植物:単子葉植物・真正双子葉植物・モクレン類(基部被子植物)
        
            種子植物の形態的な特徴は生殖器官として花をもつ、顕花植物
        
        とも呼ばれる。
        
        陸上植物は光合成色素としてクロロフィルaとbをもち、この特徴は緑藻と共通。
        藻類:緑藻・紅藻以外にも網(class)レベルで多くの分類群が存在し
        光合成式をの組成も陸上植物とは異なる。
        
        
    
    植物の組織と器官
    
        植物の器官
        茎:上方に成長し植物体を支える。
         表面には、表皮で覆われている。表皮のすぐ内側が皮層。
         皮層の内側の維管束を含む部分を中心柱。
         維管束組織では、篩部が茎の外側、
         木部が茎の内側になって1セットを形成し双子葉植物ではこのセットが
         放射状に配置されている。
         茎の中心部を柔細胞が占めている場合、髄とよぶ。
        
        葉:茎の周りに規則的に配列される。
         扁平な葉身、葉身と茎をつなぐ葉柄、葉柄の基部付近の托葉から構成。
         托葉は早くに脱落する場合もあり、観察さえrないことも多い葉身では
         光合成が盛んに行われる。
         表面と裏面には葉緑体をもたない細胞からなる表皮が存在。
         表皮細胞の外側細胞壁にはクチクラで覆われていて、
         組織の保護や水分の蒸散を防いでいる。
         表皮には、気孔の孔辺細胞、水孔、毛の分化がみられる。
         気孔は一般に葉面に一様に分布し、
        
             葉の表面より裏面に高密度に分布することが多い。
             気孔を開くことで、植物はガス交換を行い、光合成に必要なCO2を取り込み、
             水分を蒸散させる。
        
         孔辺細胞には葉緑体が存在する。
         水孔は葉脈の先端と連動して余分な水分の排出を行う。
         毛には植物体の保護や保温の役割などがある。
         葉肉細胞が構成する組織には、葉の表面側の棚上組織と裏側の海綿状組織がある。
         棚上組織では表面に垂直に円柱状の細胞が密に並ぶ。
         通常は、1層であるが2~3層の場合もある。
         海綿状組織は気孔とつながり、外界と連絡している。
        
        根:地下部で下方に植物体を支えて水や無機塩類の吸収を行う。
         茎と同様に、表皮、皮層、中心柱から構成される。
         表皮は1層の細胞、一部は伸長して根毛となる。
         皮層には細胞間隔が多く、通期組織となっている。
         皮層の最も内側の部分を内皮とよぶ。
         内皮は中心柱には含まれない。
         内皮にはカスパリー線が存在する。
         中心柱の周辺部は内鞘とよばれる。
         内鞘は内皮の内側の細胞層であり、ふつうは1層の細胞からなる。
         内鞘の細胞は、柔細胞である。内鞘は側根の原基が発生するところである。
         根の先端にある根端分裂組織は根冠によってほぞされている。
    
    
    
    モデル植物
    
        イネほか
         ゲノムサイズ:390Mb
         イネはイネ科植物の中ではゲノムサイズが小さい。
         イネ科植物あるいは単子葉植物のモデルとして用いられている。
         イネはモデル植物でありながら、主要作物でもある。
         イネの全ゲノム解析が完了したことにより、
        
             農業上重要な形質を支配する様々な遺伝子の解析が進められている。